映画『牛久』出演者ルイスさんより怒りのメッセージ

 


映画『牛久』の出演者ルイスさんは、彼の告発を監督トマス・アッシュが「虚偽」と吹聴していることに、激しく怒っています。

自分の告発が、アッシュとその取り巻きにたいする自分の怒りが、ほんものであると証明するために、ルイスさんはアッシュに送信した彼のメッセージの公開を申し出ました。

ルイスさんの意向をくんで、彼のメッセージの日本語訳、英語原文、そして送信画面の写真を公開します。


ルイスさんの告発を掲載した織田朝日の記事は、4月12日に「日刊SPA!」ウェブ版に掲載されました。

 「私は映画『牛久』に騙された」外国人収容所での隠し撮り、出演者が怒るワケhttps://nikkan-spa.jp/1822641

これに対して、トマス・アッシュ、代理人弁護士の馬奈木厳太郎、映画配給会社代表の小林三四郎が、4月15日午後に記者会見を開き、記事は虚偽だと主張し、さらには法的措置をちらつかせながら記事の撤回を要求したそうです。

(ただ、アッシュや馬名木の主張は肝心なことをあいまいにし、記者に質問されてもはぐらかした答えしか返せず、さんざんだったという噂を聞いていますが。)


アッシュの嘘つき呼ばわりへの怒りの反論として、ルイスさんが提供したメッセージは、3月28日のもの。

つまり、上記の記事が公開される2週間も前のものです。

この告発に、ルイスさんがどれほど本気であるかが、この点からも伝わるかとおもいます。(あえて、ていねいな「です・ます」で訳していますが、それでも彼の怒りはじゅうぶん伝わるかと。)

 柏崎 正憲




送信されたメッセージの画面(ルイスさん提供)


ルイスさんがアッシュに送信したメッセージ(本年3月28日)


こんばんは。

映画について、わたしはいくつもの理由から、あなたと、あなたの仲間たち全員に対して不満です。〔あなたには〕すべての理由が分かるでしょう。というのも、これらの問題について、わたしは何度も指摘し、あなたが留意するよう呼びかけたかのですから。

さらに悪いことに、あなたのジャーナリストはわたしの件には取り組まないと、あなたに伝えられました。どうしてそのことを、すでに映画が世界中で上映されたあとになってから言うのですか。


牛久〔入管〕で会ったとき、あなたが最初に言ったことは「あなたを助ける」でした。つまり、わたしが声をあげ、世界に発信するのを助けるというのが、あなたの約束でした。

あなたの仲間の何人かは、わたしと同じようなことを訴えている人たちに会いに行ったことがあるとすら言っていました。


どうしてわたしに断りもなく映画の計画を変えてしまったのか、理解できません。

あなたはわたしを騙したのだと思っています。たぶん他の人もそうなのでしょう。あなたが映画を作ったのは、収容されている外国人の人権のために戦っているふりをするのを、政治家に見せつけるためでしかありませんでした。しかし、日本の当局のせいで生じた堕胎、結婚生活の崩壊、子の連れ去りについて指摘することは、タブーにしたのです。

〔ここで言及されているルイスさんの事情については、SYI ブログに掲載した彼の手記の翻訳を参照。 「私は入管と警察に家族を奪われた」ルイスさんの告発


この真実を世界は知らねばならないとあなたは言いましたが、そのとき自分自身ではそう確信していたのでしょうか?

映画は苦い真実を隠しています。だから日本の政治家はこの映画を支援できるのです。

この苦い真実を知れば、〔世界〕じゅうの多くの人々は、日本に対して行動をとるでしょう。ところがあなたは、かれら〔日本の入管〕が外国人を粗暴で野蛮なしかたで扱いつづけるのを助けることにしたのです。


どうして〔日本の〕政府に都合のよいことをするために、隠しカメラを〔わざわざ〕持ち込んだのですか?

人が隠しカメラで撮影をするのは、体制のもっとも非人間的な部分を暴き出すためです。ところが〔あなたは〕、そのような部分をコレクションに収めお蔵入りにしておいて、日本が難民問題について抱えている問題は他の国と同じであるかのように見せかけたのです


わたしは難民の話をするために映画への出演に同意したのではありません。わたしの事情における身の毛がよだつほど恐ろしい部分を世界に知らせるために、出演に同意したのです。

あなたとあなたの仲間たちに協力するという約束を、映画が公開されるまでわたしは守りつづけました。しかしあなたは約束を守りませんでした。

あなたたち全員に、わたしは怒っています。そして日本政府は、子供を殺し、人種間の結婚を破壊することによって、外国人に対する人種戦争を続けることでしょう。

幸運を祈ります。



メッセージ英語原文

Good evening.

I'm not happy with you and all your team about the film for so many reasons and I believe that know all these reasons because I have call your attention many times by pointed out these issues.

The worse part of it is that you have informed me that your journalist will not work on my case, why are you doing that when the movie is already screening all over the world.

Your first word when we meet in ushiku was I'll help you, that was your promise to help me to speak out, to carry my voice out to the world.

Some of your teammates even informed me that there are people like me with the same complain that are being visiting by your team.

I don't know why you change your movie plan without even telling me anything.

I think that you trick me maybe others people too, but you made a movie that shows the politician that pretending to fight for the human rights of foreigners being detained but make it a taboo to point out about abortion, breakup marriage abducted children's by the japanese authority.

When you said the world most know the truth, do you believe that yourself?

The movie is hiding the bitter truth and that why japanese politicians can support it.

The bitter truth will make many people around the to direct action against Japan but you have decided to help them continue their brutal and barbarian methods on foreigners.

Why you make hiding camera to be nice for the government?

People make hiding camera to expose the most inhumane part of the system but keep all these parts for your collection and make it look that Japan have the same problem like the rest of the world about refugee issues.

I didn't accept been in the movie because of refugee story, I accepted been in the movie because the horrible part of my story will be share to the world.

I keep my promise to accompany you and your team until the movie his release but you didn't keep your promise.

I'm not happy with all of you and Japanese government will continue their racial war against foreigners by killing their children's and breaking interracial marriage.

I wish you the best.



ルイスさんの告発を「虚偽」と称するアッシュについて支援者が知っていること


映画『牛久』の作者トマス・アッシュ、かれの代理人弁護士の馬奈木厳太郎、そして映画配給会社代表の小林三四郎が、本日、4月15日13時、馬奈木の属する東京合同法律事務所で、記者会見をするという。

4月12日に日刊SPA! ウェブ版に掲載された織田朝日の記事 「私は映画『牛久』に騙された」外国人収容所での隠し撮り、出演者が怒るワケhttps://nikkan-spa.jp/1822641)に反論するためだそうだ。

織田記事に載った、出演者の一人ルイスさんの告発は「虚偽」だと主張するつもりらしい。


しかし、ルイスさんはぜんぜん嘘なんか言っていない。

自分の経験と心境を率直に伝えているだけだ。

(なお筆者の柏崎は、このブログで別の出演者について証言してきたが、ルイスさんも2018年以来支援してきたので、かれの事情も少なからず知っている。)


ルイスさんの証言の信ぴょう性を補強するために、筆者が知っていることを急ぎ書いておこう。

アッシュは支援活動の費用を他人にどっぷり依存していた 

これは噂話でもなんでもなく、アッシュ自身が柏崎に堂々と語ったことである。

このことは、アッシュがいつも入管収容者にカネを配っていた、というルイスさんの証言と整合する


そしてついでにいえば、アッシュは他人からもらったカネを使って、入管収容者に恩を売り、自分の映画に出るよう仕向けていたのかもしれない。

今日、アッシュらを取材する記者さんは、以下のことも質問してみたらどうだろうか?




1 ルイスさんの証言


まず、ルイスさんの告発の内容を確認しておきたい。

かれは難民であること、入管に収容されたことだけではなく、日本の警察が事実無根の偏見にもとづいて元配偶者と離婚するように仕向けたことも、社会に伝えたかった。

そのことを映画で取り上げるとアッシュは口約束したので、かれは2020年末までに出演に同意した。

ところが今年1月に、映画の国内上映が発表されるに至っても、その約束は実現されなかった。それでルイスさんは我慢の限界に達し、アッシュに騙されたと判断したのである。


これだけでも、倫理的にはじゅうぶん問題のあることだと思うが、くわえて、別の興味深い証言もある。

アッシュは面会にくるたびに、収容者に「面会ボランティアたちはダメだ」「私はあなたを助けることができる」「あなたの声は世界に届く」などと言っていたという(織田記事1ページ)。

つまりアッシュは、他の支援者たちを貶めながら、自分は特別な利益をかれらに提供できると吹聴していたのだ。

支援者が多くの場合に無力であることは否定しないが、当事者を口車にのせて都合よく利用しようとするアッシュにはいわれたくない。


しかもルイスさんによれば、アッシュは「面会に来るたびに被収容者たちにお金を配ってい」たのだという。

ふつうボランティアによる差入れは、寄附金など他人のカネが財源なので、領収書などが残るようなしかたで物資などを入管収容者に提供する。

カネをそのまま渡すことはほとんどない。もしそうする場合は、自分のさいふを痛めてやるだろう(柏崎もそうだ)。

しかしアッシュは「面会に来るたびに」収容者にカネを配っていたというのだ。

これは今回、柏崎もはじめて知った。


自分の映画に出演させるため、収容者に恩を売るのが目的だったのだろう。

それでも自分のカネでやるなら、倫理的にはどうかと思うが、他人に文句をいわれる筋合いはないのかもしれない。

だが、アッシュが自分自身のカネを配っていたかどうかは、非常に疑わしい。

かれは支援活動のための金銭を他人にどっぷり依存していたからである。





2 アッシュが柏崎に話したこと


以下は、2020年5月25日、柏崎がアッシュ自身から直接に聞いたことだ。

この日は、ある人(このブログで書いてきた映画の出演者)が、牛久入管から仮放免される日だった。

かれを柏崎は手伝うつもりだったが、アッシュがかれのために車を出すというので、それに柏崎は同行。

というか、アッシュは大きい車(ハイエース)をレンタルしたものの運転に自信がないというので、柏崎が運転を代わった。


運転中、アッシュが助手席で話すには、車のレンタル費用は、某大学の某教員に頼ったという。

その教員は、かれのクレジットカードをアッシュの支援活動のために使わせてくれるそうだ(カードの使い方として問題だが、そこはいま問題ではないので措く)。


アッシュはまた車内で、教会からの支援活動費の提供額が減ったことを嘆いていた。

どういう手続からは知らないが、教会からも支援活動の名目でカネを提供されていたようだ。

アッシュが属する教会は、港区の聖オルバン教会(St. Alban's Anglican-Episcopal Church)。聖公会系だ。

ちなみにこの聖オルバン教会、アッシュが映画の出演者とトラブルを起こしていることを知っていながら、問題だと考えていないらしい。

このことを柏崎は、この教会の難民支援活動に携わっていた支援者の一人から聞いた。その人は、この教会の活動のしかたに疑問をもち、距離をとるようにしたという。


このときは、柏崎は「へーそうなの」くらいに聞いていた。

アッシュ自身が金持ちではないだろうから、どこかにかれの支援活動費の出どころがあるのは、当然、推測できることだ。

しかし今考えると、アッシュは支援の名目でカネを他人に援助されながら、それをどちらかといえば自分の映画撮影の費用として利用していたというべきではないだろうか。



3 ルイスさんは嘘をいっていないことと、アッシュが他人のカネを映画作りに使っていた疑惑


このように、アッシュは支援活動費を他人にどっぷり依存していた

これはアッシュがみずから柏崎に話したことであり、嘘だとシラを切ることはできない。

そしてルイスさんは、アッシュがいつも入管収容者に気前よくカネを配っていたと証言している。


つまり、ルイスさんの証言は、柏崎が知っている確たる事実と整合する

かれが嘘をいっていないという印象が、より強まるのではないか。


くわえて、柏崎が知る事実と、ルイスさんの証言とを総合すると、こういえるのではないか。

つまり、アッシュは他人からもらったカネを使って、入管収容者に恩を売り、自分の映画に出るよう仕向けていたのではないか? と。

もしそれが事実なら、なにからなにまで、とんでもない話である。

だれかこのことを、今日の記者会見でアッシュに質問してみては?