目次
1 出演者の意向を無視
2022年2月7日 柏崎 正憲
映画『牛久』の作者アッシュは、出演者の一人であるわたしの友人の意向を無視して、彼の収容中の隠し撮り映像を自分の映画に使用しました。
このことを明らかにするために、映画のトレーラー公開(昨年5月11日)までに何が起きたかを、わたしが知るかぎりで提示します。
「同意書」の署名まで
- 2018年7月 東京入国管理局に収容中の友人が、東日本入国管理センター(牛久入管)に移される。
- 2020年5月25日 友人が牛久入管から仮放免される。なおそれまでには友人は、アッシュが面会中に隠し撮りをしていたことを知らされていなかった。
- 2020年末までに、友人はアッシュが撮った映像の一部を見せられ、映画出演の同意書に署名をした。しかし、①同意書は日本語だけで書かれていた(友人は読み書きはひらがな程度しかできない)。②同意書の写しをアッシュは友人に渡さなかった。その後に友人は、写しを渡すようアッシュに求めたが、いまだに受け取っていない。
友人がもともと出演に同意していたというアッシュの主張は、この「同意書」なる文書への署名のことを指していると考えられます。
このとき友人が、アッシュの映画に出演すること自体に同意していたのは事実でしょう。
しかし、この「同意書」に署名することによって、何にどこまで同意したことになるかを、よく知らされたわけではありません。
しかも「同意書」の写しを、アッシュはこのとき友人に渡さなかったし、いまだに渡していないのです。
だから、それが本当に「同意書」といえるものなのか、友人もわたしも知りません。
これを「同意」あるいは「契約」と呼べるでしょうか?
出演者の要望を無視してトレーラーを公開
友人はその後、隠し撮り映像の公開について懸念を表明し、あることをアッシュに頼みます。まだトレーラー公開の4か月も前のことです。
- 2021年1月17日 アッシュは東京都内、有楽町駅付近の某所で、友人ともう一人の出演者に、隠し撮り映像を含む編集中の映像を見せた。
- 映像を見たあとに友人は、自分の隠し撮り映像を使うまえに代理人弁護士や、柏崎など支援者にも見てもらって、問題ないかどうか相談したい旨、アッシュに要望を伝えた。
- 2021年5月11日までに、友人は機会があるたびに、1月17日の要望について対応してくれるのかアッシュに尋ねていた。しかしアッシュは、そのうちに場を設けるなどといって、はっきりした回答ははぐらかしたという。
- 2021年5月11日、アッシュが映画のトレーラーをYoutubeに公開。友人の隠し撮り動画もこれに含まれていた。このとき、はじめて柏崎はアッシュの隠し撮り映像のことを知った。
1月17日、友人がアッシュに伝えた要望は、十分にはっきりした内容のものです。
しかも、友人は同じ要望を4か月のあいだに何度も伝えました。
なぜアッシュは友人の要望を4か月にわたり無視したのでしょうか?
前年のうちに「同意書」に署名させたから、あとは出演者の意向などどうでもいいと、アッシュは考えたのでしょうか?
アッシュがそう考えていたに違いないことは、かれの行動がはっきりと示しています。
でっちあげの「同意」
このような経緯を友人がわたしに打ち明けたのは、アッシュがトレーラーを公開した昨年5月11日以降の、何度かの会話においてです。
こんなことになる前にもっと早く、柏崎などの支援者に相談しておけばよかったと、その点については友人は自分にも責任を感じています。
しかし、友人が悪いのでしょうか?
わたしはそうは思いません。
遅くとも昨年1月17日に、そしてその後も機会があるたびに、友人は明確に意志表示をしました。隠し撮りを公表するかどうかは支援者と相談して決めたいと。
この要望にアッシュが対応するまで、友人はアッシュを信じて待っていただけなのです。
その信頼に泥を塗ったのが、アッシュのおこないだというべきでしょう。
それに、友人の話を聞いたうえでの感想ですが、わたしは次のようにも疑っています。
アッシュは友人を「支援した」ということを恩に着せ、隠し撮りを映画に使うことにはっきりとは反対しにくい状況を意図的に作ったのではないかと。
そういう意図があったかどうかはおくとしても、事実の経過を見れば、アッシュのいう「同意」とは、でっちあげ fabrication だと結論づけるしかありません。
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